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気になる値上がり

2021年12月18日
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コロナの感染拡大が一旦収まった11月、停滞していた市場の様子は大
きく変わろうとしています。

 

あれほど日銀が物価を上げようとして努力しても、全く上がらなかった
ものが、最近は原油高を背景に様々なものが値上がりし、コロナの長期
化で傷ついた家計を直撃しています。

 

コロナで消費が停滞していた影響で、原材料不足からの価格上昇、そし
て原油高のダブルパンチで包装材料費から物流費、エネルギー費等の諸
費用が軒並み高騰しているのです。

 

少し前までは、小麦粉や乳製品等が値上がりしていましたが、最近は蒲
鉾やちくわ等の魚肉加工品まで値上がり、えっと首を傾げたくなるもの
まで値上がりしています。

 

こんな状況に拘わらず、給料は全く上がりません。

 

下がる一方の民間との賃金差が大きくなったとして、自治体職員の給料
やボーナスまで下がり始め、とうとう来夏には国家公務員のボーナスま
でカットされるそうです。

 

コロナ禍の中でも、天国のようだった公務員にも影響が出始めました。

 

新総理が来春に3%の賃金アップを要請するそうですが、もし上がった
としても物価高が帳消しにしてしまいそうな勢いです。

 

 

 

多少の賃金が上っても物価の上昇が吸収してしまいそうです。
継続的な賃上げが実現できないと諸外国のような改善とはなりません

 

 

 

心配な値上がり

 

 

そんな中で心配なものが値上がりしました。

 

介護費用の自己負担が値上がりしたのです。

 

事の発端は、今年8月にあった介護保険制度の変更で、月額利用料が大
幅に上った特養(特別養護老人ホーム)の請求書を受け取った利用者の
家族からの訴えでした。

 

介護施設の中でも一番施設利用料が少なくて済む為に、待機高齢者が数
十万人もいる自治体もあるという今迄の記事でも再三ご紹介しているあ
の特養です。

 

生活にあまり余裕のない人が利用する施設での値上がりということもあ
り、問題視されているのです。

 

新聞記事に掲載されていたものを見ると、月額利用料が制度変更前の
1.7倍になったというから利用料を支払っている家族からすると驚き
だったでしょう。

 

なぜ突然こんなことになるのでしょうか?

 

色々調べてみると、今回の改正は特養等の施設で暮らす高齢者と在宅で
暮らす人との負担の公平性を図る目的がありそうです。

 

特養等の施設で生活する場合、食事費等の自己負担に補助が付きますが、
その補助が大幅に見直されていました。

 

以前の記事でもご紹介したとおり、介護の約7割が親族によって家庭の
中で行われていることとの公平性を図る狙いがあるということなのです。

 

補助(社会保険)を使っている人と使っていない人との不公平を是正す
るとの事ですが、これには理由があります。

 

 

 

(公財)生命保険文化センターの報告書にあったグラフに筆者がわかり
やすく追記してみました。
驚くことに、施設介護を受けている人は少数派なのです。
こんな状態で、社会保障費は大変だとすると、都会に住む多くの団塊の
世代が施設介護になった場合、どれほどの社会保障費を使うのでしょう

 

 

 

今回の改正の裏には、膨張する社会保障費に対応する目的があるのです。

 

そう考えるとこれからも国や自治体からの補助は削られていくのでしょ
うか?

 

2000年に介護保険制度が開始されましたが、その時の介護保険料は、
20年後の今約2倍に膨れ上がっているそうです。

 

国は仕方なく、介護の自己負担を増やして社会保険料を抑え込もうとし
ています。

 

膨張する社会保障の負担の公平性から「全世代型の社会保障」へと舵を
切った国は今までの高齢者重視の福祉を見直していくことは確実なので
す。

 

年金以外に2000万円必要という数字は、これから根本的に見直さざ
るを得ません。

 

社会保険制度は3年に一度見直されていきます。

 

これから3年ごとに改正される度に負担が増えていきますが、このまま
では親の年金や貯蓄では賄いきれず介護をしている子供世代の自己負担
も増えていきそうです。

 

給料も上がらず、社会保険の分担も増え続け、親の介護の不足分の負担
も覆いかぶされば子供世代の生活は困窮します。

 

国はその場限りで行き当たりばったりの細かな政策に固執し、この国の
将来を左右する少子高齢化の問題を先送りにしてきました。

 

もうそろそろ、抜本的な改革が必要な気がします。

 

もうこの国の経済は、奇跡的に復活はしないのですから。

 

 

子供世代の負担はこれからどれくらい?

 

 

上記のように特養に人気が集中するのは、施設に入る親の年金だけで費
用の殆どが賄えるからなのです。

 

子供の世代からすると自分たちの生活で精一杯、親の為の出費はなるべ
く避けたいというのが本音です。

 

これからそんな悩みに直面するかもしれない方は、是非どれほどお金が
かかるのか知っておく必要があるかもしれません。

 

親の年金で対応できるのはどれくらいで、親の貯蓄で対応できるのは後
何年で、それを越えた場合どうするのか?

 

一度考えておいた方がいいのかもしれませんね。

 

60代の方は子供さんに迷惑をかけないようにご自身が70代になるま
でに準備しておく必要があるかもしれません。

 

ここで、読者の皆様と一緒にどれくらい費用がかかるのかシュミレーシ
ョンしてみたいと思います。

 

まずは、費用の中身をまとめてみます。

 

①介護サービス利用料

 

介護度によってサービス利用料が違います。
原則1割が自己負担で残りは公的介護保険となります。

 

②施設利用の場合は、施設利用料・食事費・入浴料等の諸費用

 

施設利用の場合は、施設の種類によって違いますので、以前の記事を参
考に見て頂ければわかります。

食事費は、補助が付く場合を除いて1食500円程度です。

 

 

 

 

画像素材:いらすとや
3大介助の一つ、入浴にもキチンと費用は発生します。

 

 

 

③医療費

 

以前の記事でご紹介したとおり、後期高齢者の領域(75歳)を超えた
頃から医療費が急激に多くなります。

施設から医療機関を利用する場合は、送迎料が別途かかるので要注意で
す。

タクシーを利用するより若干割安に価格は設定されていますが、月に何
度も通院する場合は、送迎費だけでもバカにはなりません。

 

 

 

 

医療費は要注意です。後期高齢者になる頃から急激に上がる傾向にあり
ますので、甘くみない事です。

 

 

 

④おむつ等の衛生用品

 

施設利用の場合は持ち込みも可能ですが、施設でも供給可能です。
(当然有償です)

子供のおむつと違って、2種類のおむつを同時に使う為、子供のおむつ
よりお金がかかります。

 

⑤初期費用

 

施設利用の場合は、入居料が必要なところもあり、一部では高額な場合
もあり要注意です。

自宅介護の場合は、リフォームを含めた住宅改修費、介護用具や介護ベ
ットの購入が必要です。
自宅改修や介護用具は補助金が付く場合があります。

 

⑥社会保険料や税金

 

健康保険や介護保険料は払い続けなければなりません。

当然のごとく住民税もそうです。

自宅介護の場合は、公共料金も頭に入れておかなければなりません。

 

⑦自宅介護の場合は食事費や各種サービス料

 

自宅で全ての食事を提供できない場合は、宅配サービス等のサービスを
使うこともできます。

自宅で入浴が困難な場合や介護者の都合で介護ができない場合はデイサ
ービスを利用できます。
(公的介護保険の対象ですが、食事費等は自己負担です)

 

 

まだ抜けているものもあるかもしれませんが、ざっとこれだけの費用が
かかります。

 

 

 

公的保険以外に自己負担がどれほどかかるのか図に示してみました。
あくまでも目安です。持病のあるなしやどのような施設を利用するのか、
年金受給額は人によって条件が違いますので、試算は重要です。
詳しくはこれ以降の文中で確認をしてください。

 

 

 

これを全て計算すると、記事が長くなってしまいますので、数年前に実
態調査した数値がありましたので、この数値を参考に計算してみようと
思います。
((公財)生命保険文化センター 「平成30年度 生命保険に関する
全国実態調査」の数値を活用)

 

まず上記⑤の初期費用ですが、平均約70万円

 

次に①~③の月単位の費用が、平均で約8万円

 

これに平均介護期間4.5年を掛けると費用総額は約500万円
(上図の左側、平均的な介護の場合です)

 

脳血管障害等の疾患がある場合は、平均介護期間がもっと長くなる為、
600~700万円はかかる可能性もあります。
(上図の真ん中ですが、疾患によってはもっと長引く場合もあります)

 

上記の実態調査の統計数値に④、⑥、⑦が含まれているかどうかの記載
がなかった為、念の為に上記の数値に加算してもみると、重度の疾患が
ない場合でも、総額700~800万円くらいになる可能性があります。
(上図の右側です。家屋の状況によっては初期費用が上る場合もありま
す。)

 

仮に総額が、750万円と設定した場合は、年金だけで賄うことは非常
に困難となります。

 

介護対象となる方の年金にもよりますが、仮にサラリーマンだった夫を
既に亡くしている母親を介護している場合を仮定した場合は、遺族基礎
年金と遺族厚生年金を満額で受給できたとしても150万円程度の自己
負担が発生します。

 

預金残高が残っている場合は、それを活用する方法もありますが、以前
の記事でもご紹介したようにこれから年金の受給額が削られた場合は、
更に厳しい状況になることが想定されます。

 

これから平均寿命がさらに延びていくことを考えると、上記でご紹介し
た統計数値の平均介護期間がさらに伸びることも十分考えられるのです。

 

高齢化が深化していく中で、介護をする側である子供世代の負担が増え
る可能性は高いのかもしれません。

 

そう考えると、やはり賃上げは大事なことだと思います。

 

大事なことはこのような事態を想定して準備しておくことです。

 

 

もう「何とかなる!」時代は終わりました。

 

親の介護も含めて自身のセカンドライフを真剣に考える時代になったの
です。

 

健康維持に努め、元気に働き続け、子供達の世代の為にもできれば年金
に頼らない生活を目指す。

 

そんなセカンドライフを実現するためには、目の前の生活だけでなく、
将来のことを真剣に考えて、計画して、準備を着々と進めていかなけ
ればなりません。

 

 

今回の記事は、値上がりしていくものの中の、気になる値上げに注目し
てみました。

 

厳しくなっていく生活の中でも、視野を広く持って将来のことを考える。

 

日々の忙しさの中にこんなことを考える時間を持つことも大事ですね。

 

今回の記事が、読者の皆様の気付きになれば幸いです。

 

今回も最後までお付き合いを頂き、ありがとうございました。