年金が下がっていく
先日、「年収300万円で時代を生き抜く経済学」で著名な経済評論家
森永卓郎さんがTVのインタビューで気になるお話しをしていました。
TV側の質問「老後の資金として年金以外にいくら必要ですか?」
に対して、森永さんの答えは即答で5000万円。
2年前官僚が発した「年金以外に2000万円必要」で大騒ぎになり、
閣僚が火消しに奔走して僅か2年で今度は5000万円!
でも今回は大騒ぎにはなりませんでした。
一評論家のコメントとして無視されたのではなく、もう国民は2000
万円でも足りないことを知ってしまったのです。
老後の資金が5000万円必要になった理由の一つとして、年金給付額
の削減があります。
本当に年金はどうなってしまうのでしょうか?
今回の記事では、年金は今後どうなるのかを読者の皆様と共に考えてみ
たいと思います。
森永さんは自宅近くで農園を持っているそうです。
年金が減っても生きていく為のKEY-WORDは自給自足かも・・・
年金受給額の調整
読者の皆様は、まだ年金を受け取る前の方が殆どだと思います。
実は、公的年金は毎年見直しをされていて支給額が調整されています。
減額されるとかいう前に年に1回調整されているのです。
公的年金の給付額は年金を支えている現役世代の賃金や物価の変動に応
じて変動・調整される仕組みになっているのです。
年金の財源は年金を支える現役世代より集められた保険料が主なものに
なっていますので、当然のごとく現役世代がもらう(稼ぐ)賃金の上限
によって調整されています。
岸田総理がいう賃金が3%以上上がれば、現役世代がもらう賃金から社
会保険料が増額されて差し引かれるわけです。
せっかく給料は上がるのに天引きされる額も増えるので嬉しくない話で
すね。
それ以外にも物価の変動も加味されています。
物価が上がれば公的年金の支給額も上がるわけです。
しかし、少子高齢化の更なる進展により現役世代が減り、高齢者世代が
増えると、現役世代の賃金や物価の変動のみでの調整では年金財政が悪
化してしまいます。
だから現役世代が減って支えられる高齢者が増える少子高齢化は国難と
呼ばれるのです。
ただ少子高齢化を簡単に止める方法はないわけですので、こんな状態を
予防する為に、年金額を調整するマクロ経済スライドという仕組みが存
在しています。
マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金
の給付水準を調整する仕組みです。
ようするに賃金が上がって物価も下がったとしても少子高齢化が進んで
現役世代の負担が増えすぎる場合は、年金支給額を下げるのです。
この仕組みによれば、少子高齢化が進めば進むほど年金支給額は減って
いきます。
少子化は今後動向が掴みにくいのですが、高齢化は2060年頃まで
は上昇を続けます。
ということは、少なくとも2060年頃までは年金支給額は減り続ける
ということになります。
どれくらい減っていくのかは計算が難しいかもしれませんが、過去の調
整額を下図に示してみました。
2015年から今年までの調整率を筆者が調べてみたものです。
2020年までは物価も安定していた為にプラス側に傾いた年もありま
すが、昨年から2年連続でマイナスとなっています。
この理由は、
・非正規の割合が増え賃金を押し下げている
・特定の企業の利益は増えているが、長引くコロナの影響で賃金が減少
している
この日本では賃金が上がるどころが減少しているのです。
以前の記事でもご紹介した主要国の賃金推移表です。
3%上がってもマイナス分は取り返しすらできません。
この状態を放置し続けた責任を明確にしてから改善策を打つべきです。
そうしないと3%の意味すらありません。
岸田総理が期待している賃金UPの結果、それが効果があるのかすら疑問
です。
そしてこれから2025年問題が爆発すると、医療費を中心とした社会
保障費が暴騰することにより更にマイナス率が上がる可能性が高いので
す。
ここまで書くと年金の将来がほんの少し見えてきます。
・もらえないことはない
・でも毎年ドンドン下がっていく
これから年金生活者の生活が心配になってきます。
そしてもう少しすると年金を支える現役世代の不満は爆発寸前になるか
もしれません。
マクロ経済スライドも意味がなくなってくる可能性すらあります。
年金制度の破綻はあり得るのか?
どのような状態を年金制度の破綻と定義するかにもよりますが、きっと
それは無いでしょう。
もし、あればこの国にも暴動が起きるのかもしれません。
その時は政治家や官僚の命も狙われる事態になるでしょう。
支給開始年齢や支給額が変わっても年金制度自体が消失するという意味
での破綻は起こらないのですが、ある意味年金の意味が消失する可能性
はあります。
それは、
・年金支給開始年齢が後期高齢者の定義年齢を超える場合
・年金支給額が最低限の生活に必要な額の60%を下回る場合
等です。
日本人の働く意欲は外国に比べて異常に高いことは知られていますが、
70歳を超えて仕事ができる可能性がある人は極めて少ないと考えます。
年齢差別が公然とまかり通るこの国で、
60歳を1日でも超えると再就職が絶望的に不可能となるこの国で、
70歳を超えて働ける場所はありません。
自分自身が経営者であったり、自営業でもない限り不可能です。
もしあったとしても、それは絶望感を感じる仕事内容だと思います。
画像素材:Jim Mayse もうすぐ春がやってきますね
でもこの国に本当の春がやってくるのはまだまだ先です。
年金問題を解決する為には、定年制撤廃や年齢差別禁止等様々な施策が
セットでなければならないのです。
年金制度の存在が消失するような破綻よりも、制度の変更が進んでいく
と想定されますが、無意味な制度変更は国民の絶望感が増殖する要因と
もなりかねません。
その時は年金制度そのものを見直すべき時なのかもしれません。
そして、その時には国民の多くがこの国の国民であり続けることに疑問
を抱くことにもなりそうです。
もう、「何とかなるさ」「なるようにしかならない」で終わらせる時代
ではありません。
・早く気付くこと
・早く対策を考えること
・方法を考えること
・1日でも早く行動に移すこと
特に現役世代は、上記の点について重く受け止め、早い段階から老後の
生活について考えていく必要があると考えます。
年金問題を考える時、いつも筆者は気持ちが重くなります。
この国の多くの制度と同じように右肩上がりの時代に考えた制度がその
ままになっているからです。
その制度が問題になり、何とかしようとするのですが、いつも中途半端
で終わってしまう。
以前の記事でも述べたとおり、問題解決の先送りばかりです。
付け焼刃で、その場凌ぎの対策で、継ぎはぎだらけの制度はいつか破綻
します。
真剣に自分の事として受け止め、自分の時代に解決する意思をもった政
治家と官僚と国民が存在しないとこの国は終わってしまいそうです。
年金問題。
国民一人一人がもっと真剣に考えるべき課題です。
なぜなら誰もがいつかは必ず老いるからです。
老いてから“なぜ”と思っても全てが手遅れです。
今回の記事は途中で気持ちが落ち込みました。
中途半端な記事になり、申し訳ありませんでした。