社会保障費の上昇に歯止をかけられるのか
先日、東京での宿泊先で朝食後にテレビでニュースを見ていたのですが、
とっても面白い特集をやっていて1時間近くも見入ってしまいました。
(2022年6月3日 羽鳥慎一モーニングショー)
特集の内容は、突如国から発表された「国民皆歯科検診」制度を検証す
る中身になっていたのです。
急遽、国が言い出したこの「国民みんなで歯科検診を受けましょう」と
いう運動の背景にあるモノは明かに鰻登りに上がり続ける社会保障費で
す。
社会保障費の中でも、高齢化と共に上がり続ける医療費が対象というこ
とになります。
国は何とか社会保障費の上昇に歯止めをかけたいわけです。
でも、読者の皆様の中に歯医者さんが好きな方は殆どいないのではない
でしょうか。(笑)
筆者も大嫌いで、あのドリルの音を聞いただけで、怖気づいたものでし
た。
結果、悪く(痛く)なるまで放置することになります。
そんな人が多いということで、医療費も高くなってしまうわけです。
6月中旬、筆者は3カ月おきの歯科検診に行ってきました
そこで地元の健康福祉事務所発行のポスターを見つけました
そこには「健口(けんこう)」が大事ですよというメッセージが…
歯科検診の重要性
歯の治療については、筆者もとても苦い経験があります。
筆者は若くして管理職になってしまい、プレイングマネージャの時には
殆ど会社に寝泊りしているような状態でした。
今なら大問題になるレベルです。
ですので、当時は残業は月200時間越え(管理職なので残業代は0)、
休みは年間数日という有様でした。
体調を崩せば病院にも行きますが、歯が悪いくらいでは我慢が先行しま
す。
そんな状態を何年も続けた結果、トコトン悪化してしまったのです。
治すのに2年もかかりました。
治療のたびに、痛い目に遭い、そして大金を支払うことになったのです。
確かに治療費は高額でした。
当然のごとく、個人支払いは3割負担、後は会社(健保)と国が支払う
のです。
ようするに悪化した歯を放置するととんでもなくお金がかかるというこ
とになるわけです。
それから筆者はどうしたかというと…
50歳を超えたくらいから、3カ月に1回定期健診を受けることにした
のです。
それ以来、大きな障害もなく今に至っています。
歯科検診で3カ月の間に虫歯ができていればその治療と歯垢を取っても
らうことで虫歯予防と歯周病予防ができます。
そして定期健診を受けるようになってから、医師の指導もあってか歯と
口腔ケアを自分でしっかりできるようになりました。
歯ブラシの後、2種類の歯間ブラシで掃除をして、最後に舌の汚れを取
り除く。
これを毎3食後に忘れることなく実施しています。
ですから、歯医者さんに行くと毎回褒められるのです。
「とても綺麗です」
褒められると嬉しいですし、支払うお金も定期健診では少額(2千円は
かかりません)です。
こんな効果のある歯科検診ですが、日本では普及していません。
筆者のように歯科検診をしている人は僅かに6%と聞くから驚きです。
この数値、英国では90%、米国でも80%という高い数字です。
その理由は、医療費の個人負担が高額だからなのです。
今回、国が歯科検診に踏み切ったのはここに理由がありそうです。
筆者がネットで見つけたグラフにはもっと悪い数字が並んでいました
(このグラフが掲載されていた記事は2015年9月4日投稿分でした)
きっと統計の取り方や時期による違いだと思います
とにかく日本人は歯を大事にしないようです
認知症との関連性
今回の特集では、歯の病気と高齢化が進むこの国で問題が深刻化してい
る認知症との関連性についても取り上げていました。
歯周病と認知症の関連性は、ある意味で新たな国民病を誕生させる危険
性をはらんでいると感じました。
なぜなら、アルツハイマー型認知症患者の約90%が歯周病に罹患して
いるからです。
歯周病は20代でも約30%、60代になると約60%の人がかかって
いるという調査結果をみても放置できない問題です。
この歯周病と認知症の関係性は図式化して説明がありました。
・歯周病が酪酸(不快臭をもつ油状の液体)という物質をつくるそうで
す。
⇩
・酪酸が血管を通して脳へ入る
⇩
・酪酸の影響で脳細胞が破壊される(脳の成長には鉄分は必要ですが過
剰に鉄分が生成された結果、脳細胞に悪影響を及ぼします)
⇩
・脳の中で記憶を司る海馬の脳細胞が減少・委縮する
この歯周病、実は影響は脳だけではありません。
歯周ポケットで発生した病原菌や毒素は血管を通して血管内に入り込み、
血管が詰まる原因になるのです。
今迄の記事でも何度も警鐘を鳴らしてきた心疾患のリスクが2.2倍に
なると聞くとちょっと恐ろしくなります。
それ以外に歯周病が影響する病気へのリスク増大は目を覆いたくなるく
らいです。
・動脈硬化のリスク :2.7倍
・糖尿病のリスク :3.4倍
・誤嚥性肺炎のリスク:4.5倍
・骨粗鬆症のリスク :6.3倍
筆者も口の中はバイ菌の宝庫だと聞いて知っていましたが、ここまで聞
くともっと早く歯(口腔)のケアをしておくべきだったと反省してしま
いました。
50歳くらいの時に奥歯の下部に横たわる”親知らず”を抜く時に先生か
ら脅された言葉も鮮明に思い出しました。
「歯(口腔内)の病気は命にかかわる」
親知らずの周りに病原菌が侵入した場合、死亡に至る病気になると真顔
で教えてもらったことがあるのです。
この歯周病の治療・予防に一番の効果があるのは、歯垢・歯石の除去ら
しいです。
この歯垢や歯石に細菌が生息し、歯茎に炎症を起こし、歯槽骨(顎の骨
と歯を結ぶ骨)が溶ける病気のことを歯周病と呼ぶそうですが、歯垢
1mgに約10億個の細菌が潜んでいるそうです。(怖)
歯は定期的なケアが必要なところだと再認識させられました。
画像素材:Jim Mayes 白い歯は見ているだけで気持ちがいいものです
自分の歯を守ろう
以前の記事で、80歳で自分の歯が20本残っていれば、日本歯科医師
会から表彰状をもらえるとお伝えしました。
(8020運動といいます)
自分の歯が残っているメリットは意外にも大きいと言えるのです。
入れ歯の手入れをしなければならないとか、固いものが噛めないとかで
はなく、歯の健康な状態を維持できると全身の健康も維持できるのです。
前述の歯周病の影響も回避できるのですが、自分の歯の本数と健康の関
係性をみるとそれがよくわかります。
高齢者を対象にした調査では、歯の本数20本以上残っている人と比べ
て19本以下の人は転倒のリスクが2.5倍になるそうです。
そして認知症の発症リスクはというと、1.9倍、約2倍になるという
調査結果が残っているのです。
これは自分の歯が残っている方が、口腔内の健康を維持し、かつ身体全
体の健康を維持しやすいということを証明しています。
ここ迄聞くと、「歯科検診やらなきゃー」と思うのですが、経済的にも
効果がありそうです。
歯科検診を受けている人は、受けていない人と比較すると医療費が年間
約13万円も少ないそうです。
この数字は、歯科だけでなく医療費全体(それも個人負担・国負担合わ
せた)の額ですが、検診なしだと医療総額が約52万円に対して検診あ
りだと約38万円だそうです。
この約13万円×国民の数になるわけなので、国も本腰を入れて取り組
もうとしているわけですね。
画像素材:Jim Mayes
雨の季節を彩る色鮮やかな紫陽花の中でも白色の花は際立って見えます
マスクの弊害
このコロナ禍の影響も出ていることがわかりました。
確かに感染が怖くて歯科医訪問を控えたことで症状が悪化した人も多い
のかもしれませんね。
そして、日々着けているマスクの影響も少なくないことがわかってきま
した。
最近暑くなってきて、街中や電車の中でもマスクを着けない人が増えま
した。
マスクを真面目につけている人は、少しショックな結果なのですが、マ
スクをしていると(息苦しいので)口呼吸が増えるのだそうです。
口呼吸が増えると、唾液の分泌が減り、口や喉が乾燥しやすくなり、虫
歯や歯周病になるリスクが増大するそうです。
唾液には虫歯を予防する抗菌作用や虫歯菌を洗い流す自浄作用があり、
唾液が減ると口の中で細菌が繁殖しやすくなるためです。
この唾液の減少、マスクの影響だけではなさそうです。
コロナ禍で在宅勤務が進み、人と会話する機会が減ったことも影響して
いるそうなのです。
特に単身生活をしている高齢者は要注意です。
会話の減少で口の周りの筋肉が使われないと唾液の分泌が減ると聞くと
少し気になります。
口周りの筋肉の筋力が低下すると、高齢期の怖い病気である誤嚥性肺炎
の発症リスクも増えてしまいます。
コロナが出てきてもう2年にもなるというのに、感染が収束する兆しが
見えません。
マスクは必須ではありますが、マスクの弊害も知っておいた上で、対処
する方法を考えておきたいものです。
国が始めた「国民皆歯科検診」どれほど効果が出るかはわかりませんが、
若い世代の負担を軽減する為にも前向きに取り組んでみる必要がありま
す。
色々なことを知って、自分自身の健康を維持し、社会に貢献し続けるこ
とが、次の世代の為にまずできることではないでしょうか。
今回の記事も最期まで読んでくださり、感謝申し上げます。