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フェーズフリーな関係

2022年10月08日
23

先日、昨年(2021年)1年間でかかった医療費が44億円を超えた
というニュースを聞いて驚きました。

 

国家予算の半分近くを医療費が食いつぶしている事実に少し背筋が冷た
くなるものを覚えたからです。

 

そこに今度は、昨年1年間の介護費が初めて11兆円を超えたというニ
ュースまで飛び込んできました。

 

年金・医療・介護に代表される社会保障費でこの国は本当に押しつぶさ
れそうです。

 

暴騰を続ける社会保障費を少しでも抑えるべく、国は2000年から
「健康日本21」というプランをつくり実行してきました。

 

10年計画で、1次、2次と続き、解決すべき課題と達成すべき数値目
標を明確にして実行されたこのプランのことを知る国民は殆どいません。

 

そんな状態でもある為か、高齢化が更に進む中で、日本人の健康寿命は
目立った改善はできていないという事実だけが残っています。

 

国も自治体と協力して、健康増進と介護予防の為に様々なプログラムを
準備してきたようですが、以前の記事にも書いたように参加する高齢者
は全く増える兆しはありません。

 

それもそのはず、高齢者の皆さんの心を読んではいないからです。

 

・要介護や認知症になりたくなかったら、運動しなさいよ

・認知症が怖かったらしっかり脳トレーニングを受けなさい

・あなたは要支援なんだから、要介護にならないようにプログラムに参
加しなさい

 

なんていう見え見えのメッセージを読まれたら、誰も参加しません。

 

ようするに楽しくないなら、誰も行きません。

 

国も本当に社会保障費を下げたいのであれば、高齢者の皆さんの心を読
まないといけないのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes  人の心を読むのは難しいですね…
でも寄り添う気持ちが伝われば見えてくるものもあるようです

 

 

施設の実態

 

 

以前の記事で、介護を受けている場所は施設ではなく、圧倒的に自宅が
多いということをご紹介したことがありました。

 

2000年に介護保険制度ができた後も、介護の70%は家族や親族に
よって行われているのです。

 

その家族や親族の負担を少しでも軽減させる為に介護保険が使えるデイ
サービスというシステムがあります。

 

朝、送迎の車が自宅までお迎えに来て、施設に集まって、入浴・食事・
レクレーション等が決まったスケジュールで行われます。

 

そう決まったスケジュール通りで殆ど個人の自由がありません。

 

自分の好きなことができる時間帯を設けている施設もありますが、職員
不足に悩む施設ではマンツーマンで対応できる余裕はありません。

 

筆者も長く勉強していたことがあるので、分かりやすく少しだけ説明す
ると、

 

・基本座っていないといけません
(極端にいうと歩いて散歩をすることもできません)

 

なぜなら歩いて転倒したりする危険性があるのと、転倒して怪我をする
と施設側の責任が問われるからです。

 

・食事の後はすぐに流れ作業で歯磨き(入れ歯の掃除)をさせられます

 

・入浴後のドライヤーは、強風による短時間作業
(本当はもっと丁寧にやってあげるべきですが…)

 

チンたらしている時間は職員には与えられていません。

 

こんな状態なので、朝に施設に来た皆さんは、昼ご飯が終わるころには
ソワソワし出します。

 

そして、泣き出す人(殆どが女性)も少なくありません。

 

「早く家に帰りたい…」

 

ようするに、こんなところに来たくないのです。

 

(介護をしてくれている)家族の為に、我慢しているだけなのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes  
たくさんの花 でもよく見ると一つ一つ違いがハッキリとわかります

 

 

理想の介護予防

 

 

高齢者の皆さんは、どんなところであれば行きたいと思うのでしょうか。

 

それは介護予防がメインではないところです。

 

(自分には)介護予防が必要なのはわかってはいるけど、それだけでは
行きたくない。

 

行くために足が向くところとはどんなところでしょうか?

 

行きたくなるところとはどのようなプログラムがあるところでしょうか?

 

これからは筆者の経験から感じたことをご紹介してみたいと思います。

 

 

<楽しくおしゃべりができるところ>

 

(人気のある)サロン的なところに集まる皆さんは一人では来ません。
(お一人で来られる方もいますが)

 

皆さん、誘い合わせて仲良しで集団になって来られます。

 

小学生の集団登校のようなものです。

 

当然集合場所から会場まではうるさいくらいにおしゃべりをしながら…

 

そして会場に到着してもお茶を飲みながら、果てしなくおしゃべりが続
きます。

 

そんなおしゃべりが疲れた頃を見計らって、体操や脳トレーニングを入
れていくのが効果的なのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes     10人も集まれば凄いパワーになります

 

 

 

<昔懐かしいものが大好き>

 

 

筆者が様々なプログラムを提供して実験している時、凄く驚かされるこ
とがあるのが懐メロタイムです。

 

プログラムの合間で休憩用に準備した懐メロを凄く楽しみにしている人
が意外にも多いことに気付かされました。

 

・この歌好きだった

・何十年ぶりに聞いた

 

体操の時よりもリズム感よく体を動かす人が多く、笑顔の花が会場に開
きます。

 

そして、歌に合わせて踊り出す人までいるのです。

 

転倒しないか心配になりますが、昔若かりし頃を思い出しているのだと
思います。

 

こんな楽しみを経験した後は、難しい勉強もしっかりとしてくれます。
(笑)

 

 

<勉強の好きな人が多い>

 

 

「高齢になったら学ぶ人は少ない」は嘘です。

 

昔、学びたくても経済的な理由で学べなかった人も少なくありません。

 

筆者が提供する講義を真剣に聞いている人は意外にも多いのです。

 

それも80代や90代の女性がノートに必死で書き写しています。

 

大型スクリーンに投影するパワーポイントのシートが見えづらいとわざ
わざ前に来て確認する人もいます。

 

自分の健康寿命を延ばすことを真剣に考えていて、皆さんPPK(ピンピ
ンコロリ)で逝きたいと熱望しています。

 

その為に学ぶ必要があるとわかれば、それを愚直に実行できる精神力が
残っているのです。

 

筆者も前で説明しながら感心させられることが多かったのです。

 

 

画像素材:Jim Mayes 歳をとっても向上心は衰えません

 

 

自分は大学院の時にこんな真面目に講義を聞いていただろうかと…

 

一緒に講義に参加していた現役の院生の中には、お菓子を食べながら聞
いていたり、ハロウィンの時には動物の被り物を被って参加していた学
生もいました。

 

講義を聞くフリをして、就活をしている学生も多かったのです。

 

きっとそんな学生たちが、この高齢者の皆さんを見たら、きっと(自分
が)恥ずかしくなると思います。

 

まとめが長くなりましたが、そこに行ったら(自分が)楽しくなる、為
になる、昔愉しかったことを思い出せる

 

それに加えて大事なのが、仲の良い人達の交流です。

 

高齢になっても、皆さん様々な悩みがあるようです。

 

同居する子供さんが引きこもり(要するに8050問題)

(コロナの影響もあり)子供さんやお孫さんのことが心配

等々

 

そして一番の心配事が歳をとるごとに増えていく身体の変化です。

 

そんな悩み事を仲良しの皆さんに打ち明けている人も少なくありません。

 

問題は簡単には解決しませんが、誰かに聞いてもらうだけでもストレス
は軽減できます。

 

会場は、

 

ストレスフリーであり、

フェーズフリーなのです。

 

いくら介護予防になるからといって、逆にストレスが溜まったり、悩み
事を抱えたまま参加することに対して抵抗があるのです。

 

ストレスフリーで、フェーズフリーな関係を気付けるところであるのな
ら誰もが参加するのではないでしょうか。

 

 

そんな(サロン的な)会場が全国に増えれば、きっとこの国の健康寿命
に(目立った)変化が出てくると筆者は信じています。

 

現場をしっかり見つめ、高齢者の皆さんに寄り添わなければ見えてこな
いものがあるのです。

 

高齢者である親を持つご家族にとって、こんな有意義な活動拠点が地域
にあることを願ってやみません。

 

 

今回の記事も最期まで読んでくださり、感謝申し上げます。