高齢化爆弾
先日、仕事中に館内放送で緊急地震速報がけたたましく鳴り響きました。
いきなりのことで、何もできずオロオロしていると、それは訓練だとわ
かりました。
不意打ちを喰らった感じでしたが、実はそれは地元兵庫県全域で実施さ
れたものだったのです。
館内放送に続いて、携帯電話からも警報音が鳴り響き、周辺は一時騒然
となっていました。
でも災害というものは、こんな風に突然にやってくるものなのでしょう
ね。
今、中東では大変なことになっていて、突然ミサイルが落ちてくる恐怖
は想像すらできないものだと感じてしまいます。
いきなりの緊急地震速報で港町では皆んなビックリだったでしょうね
災害以外にも
このブログのテーマでもある「少子高齢化」の問題もある意味災害級の
問題とも言えます。
この問題が本格的に爆発すれば、社会に対するインパクトも計り知れな
いモノになります。
ただ、この高齢化の問題、世界でダントツの高齢化率を誇るこの日本だ
けの問題ではありません。
最近ニュースを見ていても、海外でも高齢化の問題がクローズアップさ
れるケースが増えつつあるのです。
確かに筆者が大学の高齢社会研究所で学んでいる時も、周りには海外か
らの留学生がたくさんいました。
欧米やインドからの学生もいましたが、特に中国と韓国からの学生が多
かったことを今でも覚えています。
皆さん、日本の持っているノウハウをしっかり学ぶ(盗む)為に頑張っ
ていました。
同じアジアでも、ベトナムのように若い国もありますが、高齢化率の
高い国は少なくはないのです。
以前の記事でもご紹介したように、高齢化率が21%を超えると、「超
高齢社会」となります。
日本に続いて、この「超高齢化社会」になる国がこれから続々と現れる
予定です。
アジアの中で(日本以外で)最も「超高齢化社会」に近いのはシンガポ
ールですが、問題の大きさから考えると、中国と韓国の比ではありませ
ん。
なぜ、中国と韓国が問題かというと、「量」と「質」の問題があるから
です。
以前の記事でもご紹介したことのある内閣府が発表している統計です
アジアの国々はこれから急速に高齢化が進んでいきます
この統計は平成29年度のデータですが、最新のデータでは韓国が
日本の高齢化率を抜き去る推定値が公表されています
量の中国
人口で世界一の座をインドに明け渡しそうな中国ですが、それでも14
億人の人口を抱える大きな国です。
中国の高齢化率はまだ18%程度ですが、この人口に高齢化率を掛けれ
ば、その大変さが一目瞭然です。
14億人×18%
最近発表された中国の統計数字を見ると、高齢者人口は2億6400万
人で、日本の総人口の倍以上にもなります。
それも、これからも高齢者の数が急増する予定で、2050年までには
人口の約3分の1を占めるまでに拡大するとみられているそうです。
単純に総人口にこの高齢化率を掛けると怖ろしい数字になります。
この高齢者を支える為に必要な社会保障費を考えるだけでパニックにな
りそうです。
台湾海峡のことなど議論している暇等ない筈なのですが…
日本のように介護市場が成熟していない中国では、これから様々な問題
が噴出することになりそうです。
中国でも年金制度が確立されていますが、日本同様に支給年齢が上昇傾
向になることは火を見るより明らかです。
加えて、長年続けてきた一人っ子政策の影響は、高齢者を若い現役世代
で支える構造に大きな問題を投げかけることになりそうなのです。
そう、中国の「高齢化爆弾」はとてつもなく大きいのです…
経済が傾き出している状況で、この爆弾が爆発したら、とても大きな被
害が出ることになりそうです。
少子化と高齢化の関係には密接な関係があります
少子化のスピードを緩めることだけでなく、高齢者をもっと活用して
元気で稼ぐことができる高齢者を創っていく必要があるのです
時限爆弾が爆発しないように…
質の韓国
以前の記事で、日本の高齢化の特徴を説明したことがありましたね。
「高い」「速い」「深い」
この3つでした。
この日本の特徴を追い越す国がとうとう出てきました。
それがお隣の国、韓国なのです。
その「速さ」は凄まじく、結果として、将来日本は高齢化率でも世界一
の座を韓国に明け渡すことになりそうなのです。
韓国の高齢化は急速に進行しており、2040年頃には日本の高齢化率
を追い抜き、世界一になる見込みです。
韓国の人口は日本より少ないのですが、この急速な高齢化に伴い、高齢
者福祉の環境整備が遅れているようなのです。
加えて、ニュース等でもよく報道されていますが、日本を遥かに下回る
出生率の低さにも大きな課題があります。
韓国の昨年度(2022年度)の合計特殊出生率は1を大きく下回って
0.78まで落ち込んでいて、その数字は持ち直すどころか、これから
も下がっていく見通しなのだそうです。
人口減少は、高齢者を支える現役世代の減少という意味で深刻です。
日本でも、少子化と高齢化は分けて議論されていますが、この2つとて
も密接な関係にあり、本来分けて考えるものではないのです。
日本叩き等している場合ではなかったということになりますね…
ただ、出生率は違えども、その数字が良化しない理由は韓国も日本も同
じです。
低賃金と不安定な非正規で働かざるを得ない劣悪な雇用環境と婚姻率の
低下です。
若者が将来に明るい未来を描けないことが要因なのです。
加えて韓国では高齢者の貧困問題が深刻さを深めているようです。
高齢者の相対的貧困率が40%を超えているのだそうです。
画像素材いらすとや 筆者も韓国料理は大好きです 特に石焼ビビンバ
でも貧困状態になると、好きなものも食べられません…(悲)
この高齢者の貧困問題、日本も他人ごとではありません。
日本の相対的貧困率は、全世帯では20%程度ですが、高齢者世帯では
もう既に40%を超えているという統計数字まであります。
その理由は、韓国のこの問題を見ればはっきりとわかります。
・年金だけでは生活ができない
・働いて生活費を補填したいけれど、高齢では働くところがない
(若い人ですら安定した働き場所が少ない)
韓国の「高齢化爆弾」は小さいけれど爆発したら対応ができない危うさ
を貼らんでいるといえます。
多くの韓国学生が日本の高齢化対策を学ぶ為に留学してきていましたが、
日本も韓国の現状について学ぶ必要があるのかもしれませんね。
高齢者の貧困問題
日本では、まだ高齢者の貧困問題は大きくクローズアップされてはいま
せんが、韓国をはじめいろいろな国で問題が顕在化しつつあります。
先日も同じアジアの国であるタイでの問題が、ニュースで取り上げられ
ていました。
タイも日本同様に高齢化が比較的早く進んだアジアの国の一つですが、
高齢化対策は上手く進まなかったようです。
その結果が、今回の高齢者の貧困問題です。
タイも2030年までには超高齢化社会の仲間入りをする予定ですので、
問題は今より更に深刻になると考えられています。
タイの現状を見ると、その要因はハッキリしています。
・低所得者が多い
・公的年金は不十分な給付しかない
・高齢では仕事がない
韓国も、タイでも、多くの高齢者が国の支援を求めているようですが、
高齢化爆弾は別の意味で複雑さを持っています。
爆発すれば、医療費を始めとした社会保障費も爆発的に上昇する為に、
国は更なる重荷を背負うことになるのです。
画像素材:いらすとや
こんな命懸けの大変なことをしなくても時限爆弾は止められます
まずは、少子高齢化の問題を国民が正しく理解することから始めれば
この「高齢化爆弾」、自然災害と同じくらいの負のインパクトを持って
いるのです。
一度爆発してしまうと手がつけられません。
それを防ぐ方法は、まずこの「少子高齢化」の問題を国民が正しく理解
することが必要なのです。
そして、国がまず実施すべきことは、(元気な)高齢者が成果に見合っ
た報酬を受け取れる仕事に就くことができるようにすることです。
そんな社会が実現できれば、この時限爆弾の時計のスイッチを止めるこ
とができるかもしれないのです。
自然災害は止めることは、できません。
でも、「高齢化爆弾」の時限装置は外すことはできるのです。
このことに気付く人が増えないと、それができないかもしれませんが…
今回の記事は、災害訓練の時にふと感じたことを記事にしてみました。
今回の記事も最期までお付き合い頂き、感謝申し上げます。