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ピンピンコロリで逝きたいですか?

2024年08月10日
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先日、関西No.1の高級住宅街にある高齢者住宅の一室で緊急通報シス
テムが作動しました。

 

高級高齢者用住宅の部屋の中には、様々な緊急通報の機能がありますが、
今回作動したのは10数時間以上室内で水を使用しなかった場合に作動
するアラームでした。

 

緊急通報を受けてセキュリティスタッフが訪問したのは、独居高齢男性
のYさん宅でした。

 

スタッフが到着した時、Yさんはリビングのソファーに座って眠っている
ようだったそうです。

 

スタッフが眠っているものと思い、Yさんの名前を何度か読んでも返事が
なかった為、近づいて初めて異変に気付いたのです。

 

すぐに救急車を呼びましたが、Yさんは既に亡くなっていました。

 

Yさんは眠るようにソファーにもたれかかっていたそうです。

 

通常急性の血管障害(心筋梗塞等)の場合、苦痛を伴う為、身体は前か
がみになります。

 

Yさんは苦しんで亡くなったのではないことがわかります。

 

人間の死は、たいていは惨たらしいものだといいます。

 

病院で亡くなる場合も、たくさんの管を繋がれて延命措置をすることも
少なくないことを考えると、住み慣れた自宅(Yさんの場合は20年以上
居住)で、安らかな状態で逝けるなんて凄いことかもしれません。

 

お葬式等の行事を全て済ませてから、筆者はYさん宅で息子さんとお会い
することになりました。

 

 

歩いているだけで汗が噴き出す異常な暑さです
涼を求めるにも、そこまで行くのが一苦労な季節になってしまいました

 

 

自然な死

 

 

「お父さんの生前の善行のご褒美かもしれませんね」

 

と、筆者からYさんの死についてお話しをすると、息子さんからは少し
笑顔が零れました。

 

介護で子供たちに負担をかけるわけでもなく、

 

最後まで元気に過ごしたYさん。

 

急に家族とお別れをする「ピンピンコロリ」は、家族にとってショック
は大きいものの、家族への負担は少なくて済みます。

 

筆者が地元の高齢者の皆さんにお勉強や健康体操を教えていた時に、多
くの高齢女性の皆さんが口を揃えて話していたことがあります。

 

「ピンピンコロリで逝きたい」

 

このピンピンコロリは、いわば高齢者にとっては理想(の死に方)であ
り、憧れでもあるようです。

 

その理想的な死に方をしたYさん。

 

でも「自然な死に方」とは少し違っています。

 

筆者のいう自然な死に方とは、こんな感じです。

 

住み慣れた自宅で、

 

家族に囲まれながら(家族の顔を見ながら)、

 

(苦しまずに)最期を迎える

 

少し前まで、昭和の初期はこんな自然な死に方をする方が多かったので
す。

 

Yさんの場合は、住み慣れた自宅ではあったものの、家族には囲まれてい
ませんでした。

 

独居ですので仕方がないのですが…

 

 

人間も大自然の中で生きる生き物の内の一つです
ですから「自然な死」が普通の筈ですが、実際にはそうではありません

 

 

感動させられた死

 

 

筆者が大型高齢者施設の施設長をしていた時、最後の場に立ち合ったこ
とが何度かあります。

 

当時は、コロナが猛威を振るっていましたが、特別に隔離された部屋を
設けて家族に同席をして頂きました。

 

入居者(逝去者)とその奥様、そしてお孫さんを含めてご家族、

 

そして立ち合いの医師と、

 

施設責任者のみの最後の場でした。

 

逝去者はもう足が不自由でしたが、筆者が毎日午後から施設内で実施し
ていたレクリエーションを楽しみにしていて、手摺りを使いながら会場
まで移動してきていました。

 

もう生きる力が尽きかけている入居者に対して筆者が、

 

「お父さん、いつもレクリエーションに来てくれてありがとう」

 

というと、筆者の手を握り、涙を流しておられました。

 

筆者も少しは役に立っていたんだなと…

 

胸が一杯になり、

 

筆者も涙が零れそうになりました。

 

ご家族が到着されたその夜にご逝去されたのですが、家族全員に見守ら
れながら最期を迎えられたのです。

 

ご自宅ではありませんでしたが、10年以上過ごした施設で、家族に見
守られながら最期を迎えるという意味では、「自然の死」に限りなく近
いものでした。

 

医師がご逝去時間を確認してから、施設関係者と医師は退室をして、ご
家族のみで最後の時間を過ごして頂きました。

 

こんな理想的な自然な死を迎える為にはどんな努力が必要なのでしょう
か。

 

 

北海道の大型高齢者施設からの眺めです

 

 

PPKへの準備

 

 

後日、筆者がYさんの部屋の整理を始めた時、隣の部屋に住むOさんが訪
ねてきました。

 

独居高齢女性のOさん、やはりYさんと交流があったようです。

 

Yさんのご家族の連絡先を教えて欲しいとのこと…

 

Yさんにお世話になったお礼がしたいのだそうです。

 

YさんとOさんが住んでいるこの高級マンションは、高齢者住宅として
設計され、入居者は全て高齢者です。

 

最初はご夫婦で入居されたのですが、旦那様が先にご逝去されて、独居
女性が増え続けています。

 

自治会はありませんが、マンション内の集会場を使って交流の場はある
ようです。

 

日頃の交流があれば、孤独死は防げます。

 

そして、急なことがあっても助け合いもできるのです。

 

緊急通報システムは万能ではありません。

 

マンションですので、扉を閉め切ってしまうと顔も見えないのですが、
助け合うことが出来るのはやはり隣人なのです。

 

ただ、地域の交流も大事なことですが、筆者はもう一つ必要なことがあ
ると感じたのです。

 

それは定期的な健康管理です。

 

先日、筆者は年に1回の健康診断に行ってきました。

 

医師の検診、視力、聴力、血液検査、胃のエコー、心電図、胸のレント
ゲンと胃のレントゲン…

 

今回は肺気量の検査まで…

 

年々検査内容が増えていきます。

 

加齢とともに検査内容が増えていくのかな?

 

でも、働いていないと健康診断にはなかなか行くことがありません。

 

高齢になると何処かに異常がある方が多く、医者には行きますが、この
国の医療制度の問題もあり、疾病別というか臓器別の診療しかできませ
ん。

 

(この国の医療制度の問題についての関連記事はこちらから)

 

横断的に健康管理ができる仕組みがあれば、予防措置はできるのです。

 

血圧や血液検査だけでも筆者は効果があると思います。

 

働いている人には健康診断は義務付けされているのに、そうでないと健
康管理は自助努力ということになること自体問題なのです。

 

筆者は、交流の場と健康管理の場がセットになった仕組みがあれば、ピ
ンピンコロリで逝ける人がもっと増えると思うのです。

 

ピンピンコロリで逝く為には、いろいろな準備も必要なようです。

 

でも、そんな努力をしても、そうなるかどうか…

 

なんて声も聞こえてきそうですが…

 

確かに準備をしてもピンピンコロリで逝けるかどうかはわかりませんが、
高齢になっても努力は必要なのだと筆者は思うのです。

 

どんな死に方をするのか誰もわかりませんが…

 

 

今回の記事も最期までお付き合い頂き、感謝申し上げます。