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認知症2.0

2025年01月25日
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筆者は今まで多くの高齢者施設で認知症の高齢者を見てきました。

 

認知症による様々な症状やそのレベルについても勉強することができま
した。

 

ネットで氾濫する認知症の症状についての説明も、実は凄く個人差があ
り、全ての人に当てはまるというものではありません。

 

高齢者の数と同じくらいに症状があるといってもいいくらいです。

 

過去の記事にも書きましたが、問題となる症状は「物忘れ」や「うつ」
「徘徊」といったものが中心で、「凶暴化」する事例は僅かながら確認
できる程度のモノでした。

 

「幻聴」や「幻視」による気になる症状も中には見られましたが、数と
してはとても少なく、気になるモノではなかったのです。

 

ただ、施設ではない高齢者住宅での研究をしている中で、最近少し気に
なる事例が増えてきたように思えるのです。

 

それは、今までの認知症がバージョン1.0なのであれば、次のバージ
ョン2.0といえるモノなのかもしれません…

 

今回の記事は、その新たな認知症による症状というか行動についてご紹
介をしてみたいと思います。

 

 

画像素材:PIXTA
施設であればケアしてくれる職員が傍にいてくれます
自宅での生活を希望する高齢者は多いのですが、課題も多いのです

 

 

背景にあるもの

 

 

高齢者住宅に住む高齢者の皆さんは、一部の例外を除いてはその殆どが
女性の独居です。

 

バージョン2.0ともいえるその行動は、比較的経済状態が良好ではな
い集合住宅で起きています。

 

その事例の一つをご紹介すると、こんな感じです。

 

階下の住宅のインターホンを鳴らすのです。

 

ピンポンダッシュのような悪戯ではなく、クレーム付きです。

 

「こんな夜中に何のご用ですか?」

 

と階下の被害者の方が尋ねると、

 

「アンタが呼んだからきたのよ…」

 

当然身に覚えがないので、お断りしてもその行為は続きます。

 

こんなことが毎晩のように続くと、さすがに被害者側はノイローゼに
なってしまいます。

 

ストーカではないので警察もなかなか取り合ってはくれません。

 

加害者側の子供さんに訴え、対応してもらうと、

 

「私はそんなことはしていない…」

 

と、全く記憶にないようです。

 

いろいろと調査していると、要因となるモノが少しずつ見えてきました。

 

旦那様に先立たれ独居生活

 

子供とはどちらかというと疎遠関係

 

集合住宅内には高齢者も多いのですが、そんな方々ともあまり付き合い
がないようです。

 

ようするに地縁がない状態です。

 

逆に(身体能力に)障害がある人の方が、周りのサポートがある為、近
隣の住民とのつながりはあるのです。

 

一見、健康寿命を維持している元気そうな独居高齢者…

 

しかしながら、

 

経済的に余裕がなく、自分の将来に不安を持っている

 

そして、被害者宅は若い世代の子供がいる家庭でした。

 

普段、ベランダ越しに家族団らんの楽しそうな声が聞こえてきます。

 

 

画像素材:PIXTA
若い頃は家族に囲まれて生活していた方が殆どです
いきなり独居生活に追い込まれる寂しさはなってみないとわかりません

 

 

漠然とした将来への不安と、

 

自分の生活に対する不満が、

 

認知症とミックスされた時、

 

新たなバージョンの認知症へとつながるのかもしれません。

 

認知機能の低下が、どのように作用して潜在的な不安や不満と結びつく
のかは、筆者も専門家ではないのでよくはわかりません。

 

でも、高齢化と共に増え続けている高齢者の犯罪も、要因は似通ったも
のなのかもしれないのです。

 

高齢者の犯罪で一番多いとされる万引きは、本当に貧困が問題なのでし
ょうか?

 

国も自治体も高齢化で大変だと言ってはいるけれど、本当に高齢化の何
が問題なのかを分かっているのでしょうか?

 

もしかすると、この国の社会そのものが高齢化の問題の本質を理解でき
ていないのかもしれないのです。

 

筆者の身の周りで起き始めた高齢者によるトラブル…

 

何かの前兆でなければよいのですが…

 

これから認知症を起因とする高齢者の犯罪が増加していくのではないか
と少し心配です。

 

認知症バージョン1.0では、社会にとって新たな問題として捉え始め
られた認知症の様々な症状に対する対応を考えた時期でした。

 

徘徊防止や徘徊対策の様々な仕組みやシステムが考えられました。

 

いわゆる対処療法を考え続けたわけです。

 

結果、認知症患者の多くは施設や病院に行くことになりました。

 

 

画像素材:PIXTA
一旦施設に入ってしまうと写真のような自由な時間はつくれません
特にコロナ禍以降は、感染症対策等の制約が増えてしまいました

 

 

2025年問題、

 

後期高齢者の数が爆発しようとしている今、同じ形で対応はできません。

 

認知機能の低下が、他の社会問題と結びついて起きる認知症バージョン
2.0の時代、

 

社会の仕組みそのものを変えていく必要があるのかもしれないのです。

 

例えば、集合住宅の仕組みもそのままでいいのか…

 

以前の記事でもご紹介したように、高齢化対策として考えられている
ソーシャルミックス」も認知症バージョン2.0の時代に合ったも
のでないとダメかもしれません。

 

2025年問題を抱えるこの国の社会を全体に俯瞰してどんな社会シス
テムにしていくのか考える時代になったのです。

 

高齢者住宅で増え続ける火災事故にも対応していく…

 

(認知症の)高齢者による犯罪をどう防いでいくのか…

 

もっと高齢者を(雇用や社会参加という)社会システムに組み込めば、
いろいろな対策ができるかもしれないと筆者は考えています。

 

高齢化のことを理解していない「新自由主義経済(市場)」に任せるだ
けでは、増え続ける高齢者とその社会保障費で押し潰されてしまいそう
です。

 

認知症もバージョン2.0の対策を

 

この国にも新しいバージョンの社会システムを

 

そうなれば、認知症が起因する問題等気にしなくてもよくなる時代が来
ます。

 

2025年問題を考えると、やるなら今実行すべきです。

 

今回の記事は、筆者の身近に起き始めた変化にどう対応していけばいい
のかを認知症トラブルを通して考えてみました。

 

 

今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます。