死生観について考える
2階にある寝室の雨戸を開けるといつもと違う明るさを感じました。
まだ肌寒さを感じはしますが、ハッキリと春の気配を感じます。
暖かくなったり、雪が降ったりで、不安定な気候が続きましたが、それ
もどうやら終わりのようです。
「本当の春」がやってきました。
気が付けば、3月ももうすぐ終わりです。
2年間実施してきた高齢者住宅の調査研究活動も、この3月末で一旦終
了となり、筆者にとってはまた4月から新しい活動が始まります。
3月頭に高齢者の仲間入りをした筆者にとっては、この春は新たにリス
タートを切る大事な時期となるのです。
帰宅帰りに「あるんじゃないかな」と探しているとやっぱりありました
春を告げる使者「土筆」です
死生観とは生きることを考えること
筆者が生まれた1960年の日本人男性の平均寿命は65.3歳でした。
丁度、筆者の歳と同じです。
60数年前には、日本人男性の殆どが筆者の歳の頃には亡くなっていた
のです。
そんな時期に新たなリスタートを切れるなんて幸せ者だと思います。
筆者の家系の男性はみんな早死にで、60歳を超えて生きた男は筆者た
だ一人…
そんなことを考えると、筆者にとっては高齢者の仲間入りをしただけで
なく、特別な意味がある年齢なのかもしれません。
高齢者となって新たに再開する活動は、筆者にとって特別な意味がある
ものになると確信しています。
なぜなら、これからは強く「死を意識して生きる」ことになるからです。
多くの人は60歳になる頃から(自分の)死を意識するようになるそう
です。
それは多くの方々が60歳前後に大きな病気を経験することが多いから
なのか、
それとも自分の身体の異常に気付く頃だからなのかは筆者にもよくわか
りません。
ただ、この頃から人々の頭の中に「自分の死」がインプットされるよう
です。
少し古いデータですが、日本人の平均寿命の推移です
平均寿命が延びた恩恵をどのように活用していくのか、考え方次第です
以前の記事で死生観について取り上げたことがありました(2021年
5月投稿記事)
当時は北海道の大型施設で仕事をしていた関係で、施設の責任者として
常に(入居者の)死と向き合っていた時期でした。
以前の記事でもご紹介したように、
死を意識すると、
「本当に大事なことしか残らない」
希望も薄っぺらなプライドも、
将来の不安も、
何もかも「死」の前には何の意味も無くなるんだと書きました。
人間は死を意識すると強くなれるのかもしれないと…
そして、筆者もどうやらその時期になったようです。
筆者が勉強していた北海道の施設からの眺めです
遠く手稲の山並が美しく、北海道の大自然に魅了されました
自分の人生を振り返る
北海道の施設では入所者へのレクリエーションの一環で「高齢大学」と
称して勉強も教えていました。
全20回の講義の中には「死生観」についての講義も実施していました。
その講義は、入所者の皆さんに自分たちで考えてもらう内容にしていた
のです。
以下、その講義の手順を簡単に記載してみます。
<手順1>
・これまでの人生を振り返る
・自分が生きてきたこれまでの人生を振り返り、その記憶と向き合って
みる。
・これまでに起こった一つ一つの体験を振り返ることによって、
「新たな欲求」が湧いたり、
「思わぬ発見」をしたりするかもしれません
そこから、やり残したことを考えてみる…
長い人生を振り返ってみると、
例えば、
「幼少期に祖父母とよく一緒に行った洋食店へ行きたい」
「しばらく会っていない学生時代の旧友たちと再会したい」
「新婚旅行の場所をもう一度訪れたい」等々、
「やりたいこと」
「やり残したこと」
が浮かんでくるかもしれないのです。
残りの人生を有意義に過ごす為にも、
過去を振り返り、
自分のこれからの活動を見つけていけるのであれば素晴らしいことかも
しれませんね。
女性の「やり残したこと」一番は「あの名店のアレを食べてみたい」
とっても、よく理解することができますね(笑)
写真は筆者の地元にあるチョコレートの名店です
<手順2>
やり残したことが浮かんできたら、まずはそれをリスト化してみる
それを
「すぐに実現できるもの」と「すぐに実現できそうにないもの」
に分類していきます。
その上で、人生の残りの日々の過ごし方を決める
やり残したことのリストの中でも、「すぐに実現できるもの」から実行
していく
人生は限られているので、死ぬ前にやりたいことの優先順位を決めてお
くことも大切だということになるのです。
「すぐに実現できるもの」から実行していけば、後悔を少しでもなくし
て最期を迎えられるかもしれないからです。
死を意識するからこそ、自分に残された時間を有意義に過ごすことがで
きる…
こんなカリキュラムは、意外にも、聞く一辺倒の講義よりも人気があり
ました。
横の席にいる仲の良い方々と相談しながら楽しんで考える人…
黙ってノートの中に自分の考え方を書き込む人…
当時はコロナ全盛期で外出もままならない時期でしたが、入所者の皆さ
んの目が輝いていたのを今でも覚えています。
施設の中で体の衰えを感じながら毎日決まったスケジュールをこなすだ
けの生活では、「新たな欲求」や「思わぬ発見」に出会うことは難しい
ことかもしれません。
北海道の施設で実施していたレクリエーション
一番人気は「寅さんシリーズの映画」でした
「やり残したこと」は思い出の懐かしい映画を見ることでもいいのです
写真は寅さんの地元東京都葛飾区柴又の駅前にある寅さんの銅像です
以上の内容は施設の中のことですが、この内容(手順)自体は高齢期の
皆さん全てが使うことができます。
特に長い会社生活で我慢を強いられてきた皆さんには、とても有効では
ないかと筆者は考えています。
「やりたいこと」や「やり残したこと」の中に、これからの人生の糧が
存在するかもしれないからです。
「人は生きてきたように死ぬ」
そんな言葉を聞きました。
ようするに、生きざまが死にざまということでしょうか…
精一杯生きるから、良い「死」があるのかもしれません。
死を恐れるのではなく、今を精一杯生きることが「死生観」を考えると
いうことになるのかもしれませんね。
今回の記事は新たなスタートを切る(高齢期の)方々の為に死生観とい
うテーマでまとめてみました。
これから新たなスタートを切る高齢期の皆さんにとって何か役立てば
幸いです。
今回の記事も最後までお付き合い頂き、感謝申し上げます