少子化対策 何が正しいのか
先日、3つのニュースばかりがクローズアップされていました。
まさにビッグニュースともいえる3つのニュースに注目が集まったよう
です。
一つは、日本野球界のレジェンド長嶋 茂雄さんが亡くなられたことに
関するニュース。
二つ目は、投票結果を伝える韓国の大統領選挙についてのニュース。
そして、3つ目は昨年(2024年)の出生数が70万人を割り込んだ
というニュース。
久しぶりに米国トランプ大統領が世界を関税で脅しているニュースは陰
を潜めてしまいました。
筆者がやっぱり気になるのは、子供の出生数が70万人を下回ったとい
う衝撃のニュースです。
今年(2025年)2月の速報(推定)値では、72万人程度まで落ち
込むという予想が出ていたのですが…
その数値よりも更に低下して68.6万人という数字が公表されたので
す。
合計特殊出生率は、先日の記事でご紹介した推定値1.15が最終結果
だったようですが、出生数は推定から更に3万人以上も減少してしまっ
たようです。
毎年このような数字が発表される度に「初」という活字が躍ります。
初の70万人割れ…
そして、これからも「初」という言葉が続くと思うとゾッとしますね。
この数字よりも恐ろしい数字もあります。
出生数の半面で、昨年(2024年)の死亡者数は約161万人だった
そうです。
以前の記事でもご紹介したとおり、この国は高齢化が影響する多死社
会の入り口に差し掛かっています。
2023年に総務省統計局が公表したグラフです
2024年にはこのグラフ指標の下限値を下回ってしまいました
この2つの数字を差し引くと、もっと恐ろしい数字が現れます。
161万人 ― 69万人(68.6万人)= 92万人
単純計算ですが、1年間でこの国の人口は92万人減少したのです。
92万人…
数字だけ見ても、あまり実感が湧きませんよね…
90万人の人口を擁する都市はと調べてみると、ちょうど人口(市町村
別の)ランキング13位の北九州市が一番近い数字になります。
北九州市が突然無くなると考えれば、問題の大きさが理解できるかもし
れませんね。
このまま少子化と多死社会が進行していけば、あっという間に100万
人を超える事態も予測できそうです。
先日、筆者の地元でもある神戸市が2063年に100万人の大台を割
り込みそうだと大騒ぎになったばかりです。
現在約150万の神戸市の人口が、40年足らずで3分の1も人口が減
っていく時代になりつつあるのです。
市町村別人口ランキングで7位の神戸市 この港町が1年で消えてしま
うような凄まじいインパクトが人口減少には存在しています
そのインパクトは、とても大きいと言わざるを得ません。
仮にこの国の1年間の人口減少が100万人とすれば、地方の中核都市
が急に消滅したのと同じインパクトがあるのです。
そこに住む人たちが生み出す「消費」と「生産」が消え去ることを意味
しているからです。
その結果、消えていくものがあります。
それは「雇用」です。
「消費」と「生産」がなくなり、経済に大きな影響を与えるだけでなく、
その結果で仕事もなくなっていく可能性が高くなるということです。
人口減少は、地域の消費と生産活動に深刻な影響を与えます
その悪影響は、地域の雇用に対しても大きなダメージとなるのです
現在、深刻な人手不足ということもあり、正しく表現するのであれば、
質の高い雇用が無くなり、質の悪い雇用だけは残る…
といえるかもしれません。
もっとハッキリ言うと、低賃金で粗悪な仕事はあるけれど、その反対は
無くなっていくと表現することができるかもしれないのです。
これではますます将来の不安は大きくなってしまいそうです。
今、結婚する人が少なくなっている要因の大きな一つとして、非正規等
で働く若者が増えてしまったことが挙げられています。
結婚しない理由はいろいろとあるのでしょうが、将来の生活に対する不
安が結婚することを諦めさせている一番の要因であるような気がします。
もしそうであるならば、人口減少が生み出す雇用の質の低下は、更なる
少子化を引き起こす可能性が高いのです。
この人口減少、マスコミでは社会保障の担い手不足ばかりに焦点を当て
ていました。
社会保障制度が存続できなくなる…
ですが、
この国に暮す国民の生活水準を低下させ、将来の不安を煽っていくこと
への危機感の方が、遥かに影響が大きいと筆者は思うのです。
底なしの負のスパイラルへと落ち込んでいくような気分です。
この負のスパイラル、何処かで止めなければなりません。
お金のある自治体は、子供手当を拡充させようと躍起になっています。
地方のお金がない自治体は、結婚支援等に乗り出しているところもある
ようです。
出産手当も当たり前のようになりました。
何とか子供を産んでもらおうと努力しているわけですが、この施策は本
当に的を得ているといえるのでしょうか?
結婚しても、生活に余裕が無ければ子を持ちたいと思うカップルは少な
いのではないかと筆者は考えています。
そもそも子供手当が無いと子供が育てられないのは、正しいことなので
しょうか?
とても疑問に感じてしまいます。
この急激な少子化が生み出す人口減少に歯止めをかける手段を考える時、
高齢化という視点を忘れてはいけないと筆者は思うのです。
社会保障制度一つとってみても、少子化と高齢化を区別しては問題の本
質を見間違えてしまいそうです。
子供手当も大事ですが、将来の不安を軽減する安心感を与えてくれる
ものの方がもっと大事なような気がするのですが…
問題の本質を考える
今まで少子化の対策は国として打ってはきました。
その結果は、先日の記事でもご紹介しました。
それでは、どうすればいいのか…
識者の意見の中には「資本主義の限界」を指摘する声もあるようです。
少子化の問題はこの日本だけでなく、先進国のほぼ全ての国が抱えてい
る問題でもあります。
格差の問題が象徴しているように、富を持つ者が更に富み、持たざる者
は厳しいままという苦しい状況が続く限り少子化問題は解決しないのか
もしれません。
ただ、資本主義の仕組みを変えていくには、とてつもない時間と労苦が
必要なのは誰が考えてもわかることです。
以前ご紹介した公益資本主義のような動きもありますが、その考え方が
社会の中に浸透していくには、まだまだ時間が必要なのかもしれません。
マスコミが少子化対策のタイムリミットは2030年だと説明していま
した。
識者も国もきっと同じ見解なのでしょう。
これが正しいのであれば、あと5年くらいでタイムリミットを迎えるの
です。
対策ができなかった場合は、この国の社会保障制度の崩壊、財政破綻が
現実のものになる可能性が高くなります。
「資本主義の限界」を唱えても問題解決にはならない。
それではどうすれば将来の不安を和らげることができるのでしょうか…
そのヒントは、以前国が打ち出した施策の中にあります。
その施策は、1億総活躍社会…
いつの間にやら、霧散してしまいましたが、コンセプトは間違ってはい
ません。
この1億総活躍社会をもう一度真剣に考え直す必要があるのです。
1億総活躍社会の政策はどうなってしまったのでしょうか…
このまま1億総活躍社会の話しを続けると、読者の皆様も疲れてしまい
そうですので、この続きは次の記事でまとめていきたいと思います。
次回の続編もお付き合い願えますとありがたい限りです。
今回の記事も最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。